アオジタごはん

アオジタごはん|栄養設計編| 一次データと乾物換算で示す「安全域の完全設計」

アオジタごはん|栄養設計編|  一次データと乾物換算で示す「安全域の完全設計」

こんにちは、もふりっず 代表の杉本裕城です。
アオジタごはんの企画・設計・製造・販売をしています。

はじめに

情報公開に対する価値観

今回は、アオジタごはんの栄養設計について、限界まで情報を公開します。
決して面白い内容ではないかもしれません。
ですが、大切な家族に与えるごはんがどういったものなのか、皆様に知っていただきたいーー
そういった想いで、執筆いたしました。
「アオジタごはんが、どのような設計になっているのか?」ぜひ、この記事を通して知っていただき
もふりっずの価値観を感じていただけましたら嬉しく思います。

なぜ、ここまで開示するのか。
実は、爬虫類フードは、犬猫領域に比べると法的義務や統一基準が少ない分、情報開示の幅が事業者の判断に委ねられやすいという一面があります。
私たちはその枠内で、自ら基準を上げる選択をします。

選ぶのは人間であり、結果を受け取るのはアオジタ達。
生き物は食べたものでできており、勘や印象ではなく根拠で語られるべきだと考えます。
だから、配合の考え方、評価の枠組み、測定にもとづく代表値まで、可能な限り可視化します。

公開する理由は三つ。
1 飼育下のアオジタは自分で食事を選べない。選ぶのは人間。だから納得できる根拠が要る。
2 過剰のリスクは「善意の足し算」から生まれる。安全域を示すには数値の透明性が不可欠。
3 規制が十分ではないからこそ、食事を提供する私たち自身がガードレールになるべきだと考えるから。公表は責任の契約であり、数字は検証と更新で守り続けます。

これが私たち自身の責任のカタチです。
国内でも珍しい公開水準かもしれません。
それでも、信頼は透明性の上にしか築けないと考えます。

このあと本文で順に提示します。結論は皆様に委ねます。

 問題提起

未確立の基準

実は、アオジタトカゲに「本当に必要な栄養素」は、世界中どこを探しても正確な数値は解明されていません。

論文や研究データですら、いまだ明確な基準は存在しないのが現状です。

一方で、飼育の現場では、善意の「足し算」が過剰にふれることで、健康リスクが静かに蓄積しています。
ビタミンAの過剰は肝障害や骨変形の一因となり得る。カルシウムの過多は尿路結石を誘発しやすい。タンパク質過剰は尿酸負荷を高め、体調不良を長引かせることがある。

正確な数値情報が無い状況の中で、私たちは、同じ雑食性爬虫類であるフトアゴヒゲトカゲの栄養研究を出発点としました。

フトアゴヒゲトカゲの研究では、元スミソニアン国立動物園の栄養研究者 Mary E. Allen氏や動物栄養生理学の権威 Otto T. Oftedal氏らが執筆した、信頼性の高い文献が存在しています。
これらの知見をもとに、海外のフードブランドも分析を進め、フトアゴヒゲトカゲにおける推定栄養要求量が構築されてきました。

アオジタごはんでは、それらの研究をベースにしながら、アオジタトカゲの食性・生息域の違い、消化特性、国内ブリーダーの飼育知見など様々な要素を多角的に分析。

そこから「安全域」を見極め、理想的な栄養バランスを再構成しました。設計には、国内のアオジタブリーダー(ミギマル氏)と、動物栄養に精通した専門家、獣医師が参加。
科学と経験、両方の視点を融合し、「最良のアオジタ専用食」と言えるバランスにたどり着きました。

スタンス宣言

私たちが示すもの

私たちは他社比較で煽らない。他社批判もしない。
示すのは、設計思想と一次データの結果です。

私たちがお伝えする「完全栄養設計」とは、主要栄養素を既知の欠乏域にも過剰毒性域にも入れない範囲(=安全域)に収めるよう配合し、乾物換算で整合を確認した状態を指します。
この「安全域」という価値観が、設計思想の根幹となっています。

さらに安全域の中でも、数値には狙いがあります。
例えば、ビタミンD3はあえて安全域の下限へ合わせています。
実は、ビタミンD3の過剰は軟部組織の石灰化や腎障害の火種になります。
UVB照射環境を前提に、過剰側の毒性を回避する安全設計です。

設計思想

優先順位と推定栄養要求量(安全域)の定義

まず、学術情報を参考に栄養素の優先順位を設定。
そして前述の通り、雑食性爬虫類(特にフトアゴヒゲトカゲ)で蓄積された学術情報(Allen & Oftedal 等)を基盤に、アオジタの食性・生息域・消化特性、国内ブリーダーの飼育知見、獣医師の臨床視点を統合して、下記の通りアオジタトカゲの推定栄養要求量を再構成しました。
なお、低優先の栄養素は、バランスの良い食材設計で自然に充足されるため省略。

栄養素の優先順位

・タンパク質
・脂質
・カルシウム
・リン
・Ca:P比
・ビタミンD3
・ビタミンA(レチノール)
・ビタミンB1(チアミン)

マグネシウム
・鉄
・亜鉛
・ビタミンE
・ビタミンB6
・ビタミンB12
・ビタミンC
・ビタミンK
・銅
・炭水化物

アオジタトカゲ推定栄養要求量

栄養素目標域(乾物100gあたり)
タンパク質35〜55g
脂質10〜20g
Ca:P比(カルシウム:リン)1.5:1〜2.0〜1
カルシウム1500〜2500mg
リン1000〜1600mg
ビタミンD31.0〜1.5μg
ビタミンA(レチノール)600〜1200μg
ビタミンB1(チアミン)0.2〜0.5mg

アオジタごはんのレシピ

アオジタごはんは主に以下の原料でできています。

1 ヒヨコ
2 小松菜
3 ミニトマト
4 サツマイモ
5 西洋カボチャ
6 鶏卵
7 クラスタマメ

原材料は、安心安全の素材のみ。
結果として、給餌の際にサプリメントを添加しなくとも目標域を満たすことを実現しました。
人工保存料・着色料・香料は不使用。
主原料は岐阜県のきれいな水と自然豊かな環境で育った鶏由来のヒヨコ。
孵化当日加工、独自の極冷凍で急速凍結し、鮮度と衛生を確保しています。
(詳細は品質・製造編で開示)

副食材の役割設計

2 小松菜:野菜由来の全体的な栄養価底上げ(副食材の中で最も高い割合で使用)
3 ミニトマト:カロテノイド等の抗酸化に寄与。
4 サツマイモ:炭水化物(食物繊維)強化による、腸内環境改善。嗜好性の向上。
5 西洋カボチャ:ビタミンE強化による抗酸化に寄与。嗜好性の向上。
6 鶏卵:ビタミンA、D3の強化。
7 クラスタマメ:食物繊維・粘性による便性状の安定と保水に寄与。

なぜヒヨコか?

主食=母材という選択

栄養価は「マウスが最強」「アオジタの標準はウズラ」。
そういった通説があることは十分承知しております。

それでも私たちがヒヨコを主原料に選んだ理由は、完全栄養設計の母材として最適だったから。

突出の少ないプロファイル

ヒヨコは、各栄養素の数値で突出しているものはありません。だからこそ、副食材での微調整が効きます。

過剰に振れにくい

ある栄養が極端に高い素材を母材にすると、配合全体が過剰側へ引っ張られ、長期給餌の毒性リスクを避けにくい。ヒヨコは「フラットな土台」を提供し、不足分を他食材で緻密な調整が可能です。
※他の一般的な素材の栄養価を、第三者検査機関で検査・比較した上での判断です。

嗜好性は高めつつ、脂質は制御

孵化直後に残る卵黄嚢(ヨークサック)が嗜好性を押し上げる。
一方でアオジタごはんの脂質は乾物19.21 g/100gに抑え、設計レンジ内で管理しました。

例えるなら、ヒヨコは「お米」。
ベースが出過ぎないから、副食材で足りない所だけを狙って埋められる。
過不足を同時に避けるための母材です。

食材のみで安全域を満たすよう配合し、一次分析→乾物換算で検証しています。

アオジタごはんの栄養価

一次データを乾物換算で読む

「湿重量」の分析値は、「含水率」の影響を受ける。
配合の妥当性は乾物換算(Dry Matter, DM)で判断します。

換算式:乾物値 = 湿重量値 ÷ (1 − 水分%/100)

測定値(湿重量100gあたり)

実際のアオジタごはんとヒヨコ単体の測定データを公開します。

栄養素測定値(湿重量100gあたり)
タンパク質7.5g
脂質3.9g
カルシウム480mg
リン243mg
ビタミンD30.2μg
ビタミンA(レチノール)149μg
ビタミンB1(チアミン)0.08mg
エネルギー(熱量)97kcal
炭水化物8.0g
食塩相当量0.35g
ナトリウム137.0mg
水分79.7g
マグネシウム25.2mg
2.39mg
亜鉛1.46mg
0.35mg
マンガン0.17mg
栄養素測定値(湿重量100gあたり)
タンパク質15.1g
脂質4.4g
カルシウム414mg
リン261mg
ビタミンD30.8μg未満
ビタミンA(レチノール)255μg
ビタミンB1(チアミン)0.05mg
エネルギー(熱量)100kcal
炭水化物0.1g
食塩相当量0.3g
ナトリウム130.0mg
水分79.5g
マグネシウム18.5mg
3.06mg
亜鉛1.86mg
0.09mg
マンガン0.05mg未満

※ヒヨコ単体のビタミンD3「0.8 μg未満」とマンガン「0.05mg未満」は検出限界(LoD)未満の意。
実設計の検証は乾物代表値で行う。

乾物換算(代表値/100g DMあたり)

湿重量100gあたりの測定値を乾物換算すると以下の通り、アオジタごはんは全て「目標域」に収束しています。
栄養素が上限を超えていないので、10%程度を目処におやつやアオジタごはんのアレンジも可能です。

栄養素代表値/乾物100gあたり目標域(乾物100gあたり)
タンパク質37.0g35〜55g
脂質19.2g10〜20g
Ca:P比(カルシウム:リン)1.98:11.5:1〜2.0〜1
カルシウム2365mg1500〜2500mg
リン1197mg1000〜1600mg
ビタミンD31.0μg1.0〜1.5μg
ビタミンA(レチノール)734μg600〜1200μg
ビタミンB1(チアミン)0.4mg0.2〜0.5mg
栄養素代表値/乾物100gあたり目標域(乾物100gあたり)
タンパク質73.7g35〜55g
脂質21.5g10〜20g
Ca:P比(カルシウム:リン)1.59:11.5:1〜2.0〜1
カルシウム2019.5mg1500〜2500mg
リン1273.2mg1000〜1600mg
ビタミンD3-(LoD由来)1.0〜1.5μg
ビタミンA(レチノール)1243.9μg600〜1200μg
ビタミンB1(チアミン)0.2mg0.2〜0.5mg

透明性

正直であること

具体的な配合比率は企業秘密です。ただし分析の代表値は公開します。

第三者検査機関による細菌検査を実施(大腸菌・サルモネラは陰性を確認)。
詳細は品質・製造編で開示する。

本製品は医療食ではありません。体調不良・異常が見られる場合は、速やかに獣医師へご相談ください。

長期の追跡データを継続収集し、結果を公表します。

言えることも、まだ言えないことも、正直に。
それが「信頼できるごはん」の最低条件だと考えています。

まとめ

最後まで読んでくださりありがとうございました。
科学と数字で語る完全設計。
主要栄養素を安全域に揃え、不足も過剰も避けるためのアオジタ専用食。
それが「アオジタごはん」です。
ここまで読んでくださった方には十分ご理解いただけたかと思います。

次回は「品質・製造編」にて、安心と安全をどのように守っているか公開します。

▼品質・製造編もあわせてご覧ください。

2025/10/25

アオジタごはん|品質・製造編| 極冷凍×真空×14日ローテで安全を証明

はじめに このページで公開するのは、「何を入れるか」ではなく、どう作り、どう守り、どう証明するかです。工程や管理の話は、派手さこそありません。けれど、毎回の「ひと口」が設計どおりであることを担保するのは、まさにこの地味な仕組みです。 本編では、−60℃の極冷凍、真空、超低温保管、14日ローテーションという運用の意味を、単なるスローガンではなく「なぜそれが必要か」という根拠とともに説明します。さらに、温度や検査、基準といった「数字」で語る領域まで踏み込みます。 手に取るのは人間で、口に入るのはアオジタトカゲ ...

▼ご購入はこちらから

オンラインストア

参考文献

・Allen ME, Oftedal OT. (1994). “The Nutrition of Reptiles.”

・Mader’s Reptile Medicine and Surgery, 3rd Edition

・Divers & Mader (2021). Reptile Medicine and Surgery

・Allen ME, Oftedal OT. The Nutrition of Captive Reptiles(Smithsonian)

・National Research Council. Nutrient Requirements of Reptiles(草稿)

・Repashy、ZooMedの安全設計データ(経験則)

・ZooMed, Repashyなどの商用フード分析値

・AVSAB飼育ガイド

おすすめの記事

-アオジタごはん